場面緘黙症とは?
【話せない子ども・大人の
不安な気持ちに寄り添う】
教室で手を挙げられない子ども、会議で声が出せない大人。
外から見れば「大人しいだけ」と思われがちですが、当事者の心の中では 不安や葛藤が渦巻いています。
「本当は言いたいのに声が出ない」
「自分だけ変だと思われているかもしれない」
「どうして話せないのだろう…」
こうした思いが日常のあちこちで繰り返されるのが、場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)の特徴です。
話せないことは本人の意思の問題ではなく、心理的なプレッシャーが声を止めている状態です。
1. 場面緘黙症の症状とは
場面緘黙症の症状は、特定の場面だけで話せなくなることです。
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家では普通に話せるのに、学校や職場では声が出ない
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緊張すると手足が固まったり、表情がこわばる
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言いたいことがあるのに、言葉が出てこない
例えば、授業中に手を挙げたくても、頭の中では言葉が整理されているのに声にできない。
本人は「どうして自分は普通に話せないのだろう」と自己嫌悪に陥ることもあります。
外見だけで判断すると「大人しい子」「シャイな人」に見えますが、心の中では 大きな不安と焦り が渦巻いています。
声が出ないことがさらに不安を増幅し、悪循環に陥ることも少なくありません。
2. 当事者の不安な気持ち
場面緘黙症の当事者は、声が出ないことで強い不安と焦燥感を抱えています。
ただ「話せない」だけではなく、心の中で葛藤や孤独を抱えているのです。
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「話したいのに声が出ない」
頭の中では言葉が整理されているのに、声に出すことができません。
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手を挙げようとしても体が固まり、口が動かない。本人は「自分はダメな人間かもしれない」と自己嫌悪に陥ります。
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「周りに変だと思われているかも」
静かにしているだけなのに、周囲の目が気になります。
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「あの子、何で黙っているんだろう」と思われているのではないか、という不安が頭を離れません。大人の場合も、会議で意見を求められると心臓が早鐘のように打ち、頭が真っ白になってしまいます。
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「声を出さないほうが迷惑をかけないかも」
自分の存在が場を乱すのではないかと恐れ、声を出すこと自体を避けてしまうことがあります。「迷惑をかけたくない」という思いと、「自分の気持ちを伝えたい」という思いの板挟みになり、精神的な負担が大きくなります。
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小さな場面でも緊張は強まる
教室で先生に呼ばれる、職場で上司に質問される、といった些細な場面でも、声が出せず顔が赤くなったり、手が震えたりします。本人は「恥ずかしい」と思う一方で、「どうすれば話せるのか」と考え続け、心の疲労は非常に大きくなります。
このように、話したくても話せない状態は、単なる性格の問題ではなく、心の中で繰り返される葛藤や不安、孤独感の表れ です。
周囲にはわかりにくいものの、当事者にとっては日々の生活の中で大きなストレスとなっています。
3. こんなときに症状が出やすい
場面緘黙症の症状は、特定の環境や状況で顕著になります。
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初めての場所や知らない人が多い場面
新しい環境や初対面の人が多いと、緊張で声が出なくなります。
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注目される発表や会議
視線や期待が重くのしかかる場面では、話すこと自体が恐怖に変わることがあります。
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過去の失敗や恥ずかしい経験を思い出すとき
「前に話して恥ずかしい思いをした」という記憶がフラッシュバックし、声が出なくなることもあります。
当事者は声を出そうとすればするほど体が硬直し、言葉が出なくなることがあります。
外から見ると「静かにしているだけ」に見えますが、本人は必死に声を出そうと戦っている のです。
4. 当事者に寄り添うことの大切さ
場面緘黙症は恥ずかしさや性格の問題ではなく、不安や緊張によって話せない状態 です。
だからこそ、周囲の理解や配慮が回復の大きな支えになります。
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無理に話させず、安心できる環境を作る
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小さな声の成功や行動を褒める
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「話せなくても大丈夫」と安心させる
当事者は、周囲の理解や共感によって、少しずつ心を開き、話せる場面を増やしていけます。